映画「スキャナー」:残留思念を読む男

監督: 金子修介、 脚本: 古沢良太

配役: 野村萬斎(仙石和彦)、宮迫博之(丸山竜司)、安田章大(佐々部悟)、杉咲花(秋山亜美)、木村文乃(沢村雪絵)

 

【あらすじ】

 ピアノコンクールに備えてピアノ練習に励む秋山亜美(18才)は、練習の厳しさに挫折しかけていました。亜美のピアノの先生である沢村雪絵は亜美をやさしく励まします。ところが、雪絵は帰り道に何者かに襲われ拉致されてしまいました。亜美は行方不明になった雪絵を捜すために、雪絵がファンだった漫才コンビ「マイティーズ」に依頼することを思い立ち、彼らの芸能事務所を訪れました。

 「マイティーズ」はボケの仙石和彦とツッコミの丸山竜司とでコンビを組んでいました。仙石が観客の持ち物から観客の過去の状況や言葉を読み取るという超能力ネタで一世を風靡しました。しかし、その芸がいんちき呼ばわりされたことや、仙石が人間の醜さに嫌気が差したことなどが原因でコンビを解消し活動を停止していました。

 亜美から報酬30万円で調査を依頼された丸山は、亜美と一緒に今はマンションの管理人をしている仙石の元を訪れました。物に宿る「残留思念」を読み取る能力を持つ仙石でしたが、人間嫌いであり、しばらくその能力を使っていなかったこともあり、当初は依頼を固辞していました。しかし、亜美が落としていった爪やすりから雪絵の思念を読み取ってしまい、依頼を受けることにしたのでした。

 そして、仙石は雪絵の遺留品の自転車から残留思念を読み取り、雪絵の行方を追っていきます。そして得られた手がかりを警察に情報提供したところ、事件は思わぬ広がりをみせ、コンビは命を狙われることに。・・・

 

【残留思念】

 犯罪事件の遺留品を科学的に調べて物的証拠を積み上げていくのは警察捜査の王道です。それと平行して、動機の解明が犯罪捜査の鍵となるでしょう。この映画では遺留品に残る思念を読み取るという手法が示されていて斬新です。果たしてそのようなことが可能なのでしょうか。

 人間の思考は一日で莫大な数となります。実体験をモニターした思念もあれば、雑念妄想もあるでしょう。それらを全部読み取れたとして、有用な情報を選択するのはかなり困難でしょう。また、他人の思考もノイズとして加わることとなります。ノイズに埋もれた微弱な情報を読み取ることは一層困難を極めるでしょう。

 では、物に込められた思念を読み取るのは不可能かというと、そうでもなさそうです。強烈な思念である呪詛が込められた物を安部晴明が見破ったという伝承があります。心がこもったプレゼントをもらって嬉しくなるのは、愛の残留思念を感じるからでしょう。

 思念というほど明快なものでなくても、持ち物に所有者の「気」が入ることはあります。人が使っている道具を使わせてもらうと最初に必ず違和感があります。人の車を借りるときもそうです。人の服を借りて着るときも違和感を覚えます。神経質な人ならば、持ち物はすべて自分専用でないと気がすまないでしょう。

 職人が丹精込めて作った物には、その人の魂がこもります。仏像に仏師の魂が宿り、茶器に工人の魂が宿り、刀剣に刀鍛冶の魂が宿ります。たとえば、鎌倉時代の刀には不動明王の利剣の刻印があるものがあります。これらは実用品の域を超え、破邪の剣となるような祈りが込められています。芸術作品には芸術家の魂が宿ります。それらを鑑賞するのは楽しいことです。

 【日本映画のマンネリ感】

 一般的な話ですが、日本映画は安易に人を殺しすぎます。逆に言えば、人を殺すのが納得できるような充分な動機がないように思います。この映画もその点は例外でありません。

 それと、映画に警察が出てくると、とたんに嘘臭くなるのです。警察官としての身分が同じであっても、巡査と刑事では人種がまったく違うように思われます。巡査は一般人のようであるの対し、刑事の目つきはすごみがあって尋常ではありません。

 

【年齢設定がおかしい】

 詳しく書きませんが、子供の年齢設定がおかしいです。10才以上違うはずなので、一人は乳児か幼児であるはずです。 

 

【思念と霊】

  念とは、今の心と書きます。念を出すのは霊です。ネタバレになりますが、この映画には霊という言葉は出てきませんが、霊が出てきます。そして、霊を供養するようなシーンもあります。死ぬ人がいても満足して死んでいくのがこの映画の救いでありましょう。 

コメント: 2 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    かなみ (月曜日, 09 5月 2016 08:42)

    年齢設定について

    観賞中は年齢が離れているように見えて同じように感じましたが、そこは杉咲花ちゃんが幼く見えることが4人目が彼女であるとは思わせないようにしてあるところなのでしょう。
    『小学校高学年のお姉さんたちについていった5、6歳の子』だったわけだから、花ちゃんは実際18歳ですし高校生設定でしたし、ピアノ教師が24~25歳設定ならおかしくはないのです。

  • #2

    ある たいる (火曜日, 10 5月 2016 12:35)

    コメントありがとうございました。Jimdoのコメント返信機能がみあたらず、返事が遅くなってしまいました。年齢設定の件、微妙な判定ながらセーフなのですね。納得いたしました。
     今回は名手金子監督の作品ということで、期待が大きい分、辛口の批評になってしまったかもしれません。
     書きませんでしたが、音大出たての先生について優勝できるほどコンクールは甘くないわよと一瞬思いました。でも木村文乃さんみたいな先生に「才能は人のためにあるの」と言われて優しく励まされたら誰でもやる気を出すでしょうし、先生は怪我で演奏家を断念した天才ピアニストという設定だったし、不思議はないのかも、と思いなおしました。優勝の方が先生も浮かばれることでしょうし。