映画「秘密 THE TOP SECRET」:死者の記憶を取り出す

原作 : 清水玲子

監督: 大友啓史

キャスト:  生田斗真、岡田将生、松坂桃李、吉川晃司、栗山千明、織田梨沙、リリー・フランキー、椎名桔平、大森南朋

 

【あらすじ】

 検察庁に属する特別捜査機関「第九」は、最新の科学を用いて死者の脳内記憶を映像化することに成功した。脳内記憶の映像は幻覚も映像化されるので証拠とはならないが、犯罪捜査に有力な手がかりを与えるとされ、捜査にかかる人件費のコストを大幅に下げるのに有用である。あるとき「第九」は家族を殺害した罪で死刑が執行された男の脳内記憶を読み取ったが、そこには意外な真相が画像化されていて、冤罪であったことが判明した。そして、過去の別件の大量殺人事件との接点も浮かび上がってきた。新たな殺人事件の発生を防ぐべく「第九」の捜査員たちはアウトローな刑事の協力を得て奔走するのだが・・・。 

【感想】

 この作品は監督自らが脚本を手がけた意欲作です。冒頭で街の通りの夜景が脳神経のネットワークに変わっていくシーンでは、おおっ!と驚きました。

 

 死者の脳神経のネットワークを再現して記憶を取り出すという発想は面白かったです。それが実現するかというとかなり疑問なのですが・・・。

 その理由としては、まず個体の死に引き続いて脳細胞が壊死するので、脳神経のネットワークを死後に再現するのは困難です。次に、仮に脳神経のネットワークを再現できてもそこに流れた電気信号を特定して再生するのは不可能でしょう。つまり、電気回路がわかっても、回路から過去に流れた電気信号を再現するのは不可能です。例えていえば、道路地図から過去にそこを走った車を特定しようというようなものです。理屈っぽくなってすみませんが、それらの問題点は技術的にクリアできたものとして映画を見ることにしましょう。

 

 この映画で描かれたものは、記憶、犯罪、法医学、検察、幻覚、夢、カルト、洗脳、月食、死刑、死体、性愛、近親相姦、嵐、盲人、盲導犬などでした。気学で言えば一白と五黄の象意になるでしょう。 

 この映画は万人向けではないかもしれませんが、私的には面白かったです。とはいえ、 法医学的なグロいカットや殺人シーンを見せられるのはきついものがありましたが・・・。

 この映画の内容は単純ではなく、知的に深いものがあります。連続殺人の犯行の動機が怒りや憎悪といった情念であれば、その背景については脳を科学的に調べても解明できないように思われます。霊的には憑依とカルマで説明できる場合が多いのですが・・・。

 この映画の終わりの幸福なシーンは救いがあるものでした。そして、そこには皮肉も込められていて考えさせられました。

 

【俳優の演技など】

 生田斗真はクールな「第九」室長の「薪」を演じました。英語の質疑応答は格好良かったです。カメラはこの人の美しい横顔をうまく撮っていました。

 岡田将生は新人捜査官を熱演しました。額を出してメガネをかけると理知的で実際より年上に見えるものです。親の家に住んでいるのですが、1970年代の家具調ステレオが気になりました。

 松坂桃李は「薪」とともに「第九」を立ち上げて、捜査中に錯乱して亡くなった捜査官を熱演しました。

 吉川晃司は青い目をした不気味な大量殺人鬼として登場。肩幅の広さは昔と変わりません。

 栗山千明はクールな監察医役として出演。初日舞台あいさつ時に大胆な衣装で登場して世界の半分を征服する勢いでした。

 織田梨沙は難しい役柄を体当たり演技で頑張ってこなしたと思います。撮影の光線の加減で、なんとなく国籍不明アジア人に見えました

 リリー・フランキーはあぶない医者のチョイ役でしたが、鮮烈な印象を残しました。監督にとってはジョーカーのように便利な役者でしょう。

 椎名桔平は大変な役をごくろうさまでした。本当に髪を剃られたのか気になりました。

 大森南朋は熱情型のたたき上げの刑事を暑苦しく熱演しました。ジャガーに乗って直情のままに行動する刑事の場違い感は半端でありませんでした。