映画「青空エール」:応援は人の心に届く

 野球と吹奏楽の部活に打ち込む男女の高校生の青春ストーリー。原作は河原和音の人気マンガです。舞台は札幌市立白石高校の吹奏楽部がモデルだそうです。この作品は世代を越えて鑑賞に堪える良質な映画です。なお、whiteeenが歌う、Greeeenの「キセキ」をカバーした主題歌も良いです。

 

 吹奏楽部の小野つばさを演じたのは土屋太鳳。野球部の山田大介を演じたのは、竹内涼真。二人とも現役大学生ですが、冒頭のシーンでは高校の新入生を演じていて、子供子供した初々しさを出すのはさすがに年齢的に無理があったでしょうか。土屋太鳳はなんとか髪型でごまかしていました。竹内涼真は高校球児の役でしたが、さすがに坊主頭はムリであったか。

 

 吹奏楽の伝統校である北翔(ほくと)高校に入学した小野つばさが吹奏楽のトロフィーを見ていると、隣の野球の準優勝のトロフィーを見ていた山田大介から声をかけられます。その場で大介は甲子園に行くことを宣言。つばさに応援してくれるように言います。また、つばさは、同じ中学から来たクラスメートの脇田陽万里(松井愛梨)とも仲良くなりました。

 

 つばさは初心者ながらトランペットを吹きたくて吹奏楽部に入部希望を出します。上野樹里が演じる顧問の杉村先生は厳しくて、風船を膨らませられるようになったらまた来るようにと言って門前払いを喰わせました。努力して風船を膨らませるようになって入部したつばさでしたが、入部の動機を「応援」と言って、吹奏楽部員達から冷ややかな視線を浴びました。部員達の目標は全日本吹奏楽コンクールの金賞を獲ることだったからです。映画で「普門館」という言葉が出てきますが、同コンクールは2011年まで東京の普門館で行われました。吹奏楽員にとっての「普門館」は野球少年の「甲子園」に相当するのでしょう。なお、2012年からは同コンクールは名古屋国際会議場センチュリーホールで行われています。

 

 葉山奨之が演じる同級生の水島亜希はクールでトランペットが上手な男子ですが、小野に対して冷やかでした。名門の吹奏楽部にとって初心者はお荷物のようなピリピリした雰囲気がありました。そんななかでつばさは腹筋練習をしたり、お風呂でマウスピースを加えて練習したりして努力をしていきました。ですが、演奏レベルの差はいかんともしがたく、吹奏楽の発表会でつばさはトランペットを吹く真似をして音を出さないでしまいました。演奏を聞きに来てくれた家族はそうとは知らず喜びましたが、水島はつばさを詰問しました。反省したつばさは部長をはじめ部員達に謝ったのでした。

 

 大介は目標を実現すべく野球に打ち込みます。そんな大介に魅かれたつばさは、ある日、大介に告白しましたが、野球に専念したいので友達でと振られてしまいました。

 

 キャッチャーの大介は1年生の地区予選の決勝で怪我をした先輩の代わりにマスクをかぶることになりました。そして疲れが出てきた九回、大介の痛恨の送球ミスで北翔高校は青雲高校に敗退してしまいました。その時茫然自失となって落ち込む大介に向けて、つばさは思わずトランペットを吹いて励ましました。この行為は応援のマナー違反であり、つばさは謹慎処分を受けました。

 

 トランペットは輝かしく響く高音が出せる楽器で、吹奏楽の花形だと思います。楽器が人の性格に影響を与えるということがあるのでしょうか。1年生の時は声が小さく、すぐにうつむいて靴を見て自分の靴を見てしまうつばさでしたが、大介に上靴にニコちゃんマークを書いてもらい励まされました。

映画の中では腱鞘炎になってコンクール参加が叶わなくなったトランペットの先輩・森優花(志田未来)をつばさが中心になって励ますエピソードがありました。つばさはトランペットを練習しているうちに、積極性が出てはっきりと意志を表すようになったと思います。

 

 大介は3年生になって、練習中に足首を怪我してしまいました。大介は怪我の治りが悪くて、必死の思いでリハビリをしながら再起を図ります。リハビリを頑張る大介を励まそうと、小野は吹奏楽部員に頼んで、皆で病院の庭で応援の演奏をしました。今までいつもつばさを励ましてきた大介がつばさに励まされる感動的なシーンでした。

 

 さて、南北海道大会の決勝戦、相手はライバルの青雲高校。堀井新太が演じるクラスメートの城戸が投げ、キャッチャーは後輩がつとめます。九回の表の相手チームの攻撃で、疲れが見えた城戸は勝ち越しのランナーを背負ってしまいます。ここで監督はタイムをとり、なんとピッチャーではなく、キャッチャーを交代させたのでした。大介がマスクをかぶります。息を飲むようなピンチでの守備。北翔高校の吹奏楽部員も、陽万里らチアガールも父兄も北翔高校を応援するわけですが、映画の観客の私もつい手に汗を握って応援してしまったのでした。

 

 人を応援するということ、そして応援が人に届くと人はどうなるかということが、この作品のテーマのように思われます。そこがこの作品でどう描かれていたかは映画をご鑑賞下さい。

 

 志がある人に対して周囲の人はそれを否定せずに尊重するのが大切だと思いました。また、志を持ったらそれを貫くことが大切なんだ、とも。

 

 この映画、秘めた恋愛感情も描かれますが、かなり直球勝負のストーリーです。製作期間は短かったと思いますが、三木孝浩監督は原作の世界を大切にして細部まで丁寧にまとめ上げていました。例えば、上靴や神社の絵馬が時の流れによって古びた様子とかです。音楽室には「一心不乱」の部旗が壁にかかり、現実味がありました。演出は自然であり、見せるべきところはしっかり見せていました。いろいろなエピソードが要領よく挿入されていて、ぐいぐいと物語に引き込まれていきました。

 

 架空の団体が描かれるのが映画のお約束です。南北海道大会の勝ち抜き表に出ていた、ありそうでない高校名は面白かったです。映画で出てきて大介が絵馬をかけた札幌住吉神社も実在しません。住吉大神は海の神なので、小樽住吉神社が実在するように、港町に祭られていることが多いです。札幌の町は歴史が浅いので、映画に出てきたような神さびた社殿はありません。原作では札幌白石神社を想定しているのでしょうか。白石神社のお祭りは映画で描かれたような賑やかなものです。