映画「超高速!参勤交代リターンズ」:田舎大名、幕府にキレる

監督:本木克英

出演:佐々木蔵之介、深田恭子、井原剛志、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生、六角精児、古田新太、市川猿之助、石橋蓮司、陣内孝則、西村雅彦、他

 予告編からコメディータッチの娯楽時代劇のつもりで見たら、けっこう本格的な時代劇だったのでびっくりです。設定は奇想天外なところが多いのですが、殺陣は迫力がありました。役者達は走りやら殺陣やら身体を張った演技で、しかも格好良く描かれていました。

 

 湯長谷藩は福島県いわき市に実在した藩で、一万五千石の親藩でした。時代は八代将軍吉宗の治世で、湯長谷藩は四代目の内藤政醇(まさあつ)が藩主という設定でした。

 

 前作で江戸に急いで参上した藩主一行が大名行列を仕立てて湯長谷に帰るところから物語は始まります。もっとも小藩のことなので、日雇いの者を従者に仕立てて人数を多く見せたり、かかる費用は家臣達が江戸暮らしの際に稼ぎ出したりと苦労が絶えません。

 

 前作で湯長谷藩の金山に疑いをかけて失敗して蟄居となった老中・松平信祝(のぶとき)は、将軍吉宗の日光東照宮参拝の恩赦で蟄居を解かれます。そして、将軍を出せなかった尾張藩主と結託し、内藤政醇への仕返しと吉宗暗殺を企てたのでした。

 

 信祝は尾張柳生家の手の者を送り込んで、湯長谷に百姓一揆をおこします。そしてすかさず目付を湯長谷に送り込んで不行き届きとのことで湯長谷藩を改易にしました。内藤政醇ら一行六人は牛久宿から四十里を二日で走って苦労の末に国元に帰ったのですが、藩は取り潰しとなり代わりに柳生一族が入城していました。領民は米を盗られて困窮しており、中には田畑を取られてしまった者もいました。ここに政醇は怒り心頭に達し、家臣らと合わせて七人で信祝ら幕府方と尾張柳生の一千人に戦いを挑むのでした。

 

 といったストーリーなのですが、信祝が糸を引いた老中二人の暗殺事件にからんで南町奉行大岡忠相が出てきたり、ハチャメチャな展開です。戦国時代ならいざ知らず、太平の江戸時代にどうしてお殿さまがこんなにチャンバラが強いのか不思議であります。可哀想なのは悪役にさせられた柳生一族です。柳生の手の者は忍び装束のような格好をしていて、何やら仮面ライダーのショッカー軍団を彷彿とさせました。柳生家は大和の柳生藩一万石の系統と尾張藩に仕えた系統がありました。映画では尾張柳生が藩を持ちたくて信祝の謀略に荷担したという設定でした。映画では湯長谷藩は弱小貧乏藩ということだったのですが、それでも一国一城の主になりたいと思うものでしょうか。そういえば、映画に出てきた湯長谷藩の城はたいそう立派なものでした。

 

 この映画を見て笑ってはハラハラしていたわけですが、一方で江戸時代の閉塞的な空気を感じました。特に、参勤交代や賦役を課せられた藩の大名達は幕府からの圧力に対して憤懣やるせなかったのではないでしょうか。