映画「真田十勇士」:実戦のエグさ、でも違う

監督:堤幸彦

出演:中村勘九郎、松坂桃李、大島優子、加藤雅也、永山絢斗、大竹しのぶ、松平健

 

 日本一の兵(つわもの)と評された真田幸村(信繁)が実は腰抜けだったという設定の娯楽時代劇です。この映画はNHKの大河ドラマ「真田丸」が人気の今年、最高のタイミングで上映されました。

 「真田丸」は時代考証が充実していて、登場人物の性格や立場が良く描けています。一方で大河ドラマというには合戦シーンがしょぼくて物足りない部分がありました。その不満はこの映画を見て解消できました。

 この映画は大坂冬の陣と夏の陣を描いています。それらの合戦シーンは迫力がありました。大がかりな真田丸のセットや大人数のエキストラ、爆発と炎上、コンピュータグラフィックスなどにより、合戦が大きく描かれていました。音響では、打物の金属音が臨場感を増していました。迫真の殺陣はさすがで、兵が斬られた時に血しぶきが飛ぶのがえぐいのでした。

 

 最初に真田九勇士が幸村の元に集まる話から始まりますが、なんとアニメで意表を突かれました。そのうち、「アニメ映画ではなく本編が数分で始まります」というテロップが出て安心しました。

 この映画は中村勘九郎が主演のせいか、バサラというかカブキ的な味付けを感じます。「真田丸」の佐助が農民の恰好をしていて信繁の命令を慎んで受けるのに対して、この映画の猿飛佐助はナルトの登場人物のような恰好をして鼻にブリーズライトを付けていて生意気にも幸村(信繁)に入知恵をする存在でした。そして、猿飛佐助は「嘘も最後までつきとおせば本当になる」と言って弱気な幸村を励まし続けたのでした。

 加藤雅也演ずる幸村と大竹しのぶ演ずる淀君がお互いに心を寄せていたという設定でしたが、私は「後妻業の女」のイメージが浮かんでしまい感情移入が難しかったです。勘九郎の猿飛佐助と松坂桃李の霧隠才蔵はともに抜け忍であり、大島優子演じる忍者の首領の娘・火垂(ほたる)から命を狙われるのですが、火垂は才蔵に恋心を抱いているというややこしい設定でした。全部が戦闘シーンでは疲れてしまいますので、このあたりは緊張をほぐす所なのでしょう。最後の方でストーリーは意外性を増してケレン味溢れる展開となりましたが、そこは書かない方がいいでしょう。

 

 迫力があった合戦のシーンですが、たぶん現実と違いがあります。本当は各部隊はもっと組織的かつ守備的に戦ったと思うのです。映画にも出てきた「大坂夏の陣図屏風」を見ると、各部隊は密集していて、鉄砲には鉄砲、槍には槍という形で対抗しています。乱戦をするにも個人対個人ではなくて、集団対集団で戦ったのではないでしょうか。そして、上官の指揮に基づいた組織的な戦闘ができなくなった時には雑兵は激戦地から逃げたはずです。 

 

  大勢が徳川家に決した世の中となって、何故に真田幸村が徳川家康に刃向かい続けたのか、その理由はこの映画では全くといっていいほど触れられていません。その理由は因縁と遺恨の部分が大きいでしょうし、戦国時代の終焉という意味もあったでしょう。すなわち、豊臣方についた因縁という部分では、真田信繁(幸村)が豊臣秀吉に小姓として仕えて薫陶を受けたり、豊臣家の重臣であった大谷吉継の娘を娶っていたことが大きいでしょう。遺恨では、高野山近くの寒村(九度山)に共に流罪となってその地で死んでいった父昌幸の無念を晴らしたいという思いもあったでしょう。「真田丸」を見て思ったことですが、第一次上田合戦で最初の妻が徳川軍に殺された事が遺恨の部分で大きかったのではないでしょうか。

 太平の世では戦乱の荒武者達は無用の存在となります。戦国時代が終わるにあたって歴史は血に飢えた兵(つわもの)どもを消し去らねばならなかったともいえるでしょう。豊臣方の牢人達は時代の変わり目を感じとり、一花咲かせたいという思いで死に場所を求めて大坂城に集まったのではないでしょうか。特に後藤又兵衛からはそのような心情が感じられるのですが・・・。なお、家康は大坂夏の陣の翌年、1616年に亡くなりました。 家康こそが戦国時代最大の兵だったと思われます。

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コメント: 2
  • #1

    ねね (土曜日, 01 10月 2016 22:22)

    初めてこちらのサイトを拝見しました

    時代考証について

    あれ?
    この角材、こんなきれいなのあったの?

    この馬、この時代にいなかったんじゃ?

    海野のメガネ、プラスチック?

    等と
    あまり詳しくない私でもあら?と思う箇所が多々あったので
    こちらのサイトを読んで

    やっぱり!となんだか、納得してしまいました
    詳しく解説してくださって
    ありがとうございます!

  • #2

    ある たいる (土曜日, 01 10月 2016 22:31)

    ねね様
    コメントをいただき、ありがとうございました。
    確かに、海野六郎のメガネ、違和感ありましたね。よく細部をご覧になっていらっしゃいます。
    今後とも、よろしくお願いいたします。