映画「何者」:ロックバンドと演劇の明暗

原作: 朝井リョウ

監督: 三浦大輔

配役: 佐藤健(二宮拓人)、有村架純(田名部瑞月)、菅田将暉(神谷光太郎)、二階堂ふみ(小早川理香)、岡田将生(宮本隆良)、山田孝之(サワ先輩)

 若手人気俳優を豪華に起用して就職活動する学生達の姿を描いた異色映画です。

 

【あらすじ】

 ひょんなことから五人の男女学生は就活において共同で対策を練るようになりました。大学で演劇に打ち込んだ二宮拓人、拓人の友人でロックバンドに打ち込んだ神谷光太郎、光太郎の元彼女で拓人が想いを寄せる田名部瑞月、瑞月が意気投合した帰国子女の小早川理香、理香の同棲相手でクリエイター志望の宮本隆良といった面々でした。当初は拓人、光太郎、瑞月、理香が熱心に就活をしていて、隆良は就活に無関心を装っていたのですが、後に隆良も就活をしていたことがわかりました。一方で拓人は大学で一緒に演劇をやってきて、卒後も就職せずに自分の劇団活動を続けていくギンジを非常に意識し、ときにギンジに干渉しました。何も考えていなかったような光太郎が出版社の内定を得、瑞月が電信会社の内定を得ました。しかし、光太郎も理香も内定が得られませんでした。そうした状況で五人の結束は崩れていきました。決定的だったのは、分析力が高い拓人が就活仲間について皮肉な表現でツイッターに投稿していたのがばれたことでした。面接では一分間で表現するだけと豪語していた拓人は演劇の事について面接官に話そうとして絶句してしまいます。そんな感じで映画は終わります。

 

【感想】

 原作を読まずに映画を見たのですが、うーん、正直よくわかりませんでした。まず確かなことは、この作品は就職活動をする学生側の映画であって、採用する企業側の映画ではないことです。単純に考えると、分析力に優れて演技力がある拓人は内定への最短距離にいると思われます。また、帰国子女で英語バリバリで積極性が高い理香も採用されやすいと思われます。しかし、映画では拓人、理香、隆良は内定をもらえず、天然系の光太郎や純朴系の瑞月がサクッと内定を得ました。この映画は就活の参考にはならないのではないでしょうか。就活で内定を待つ学生の不安感は良く描けていると思うのですが・・・。

 光太郎役の菅田将暉がバンドで歌うシーンが挿入されて、それがさまになっていて、とても良かったのです。

 ところが、拓人役の佐藤健が行う演劇のシーンが酷い出来栄えでした。佐藤健の演技ではなくて演劇自体が、ということです。テレビであれば、演劇のシーンでチャンネルを変えたくなるような違和感がありました。この映画では、就職しないで演劇の道を行くギンジの生き方を拓人が羨む気持ちが感じられ、それゆえに成果も上げないうちに社会にアピールするギンジに拓人が反発する姿が描かれました。ですが、演劇が低レベルならば、それに嫉妬してとやかく言う拓人が小さく見えてくるのです。また、学生時代に拓人が演劇に打ち込んだことが無駄にさえ思えてきます。映画では、卒業に際して演劇をやってきた劇団員達の涙ながらの挨拶が挿入されるのですが、演劇のレベルが低いと劇団員達の感動が宙に浮いてしまうのでした。そう、この映画が輝くためには挿入される演劇のシーンが圧倒的な高レベルである必要がありました。

 また、登場するギンジは横顔だったり、後ろ姿だけだったりして存在感が薄く、したがってすごさも見えてきませんでした。ギンジは拓人が意気投合して一緒に演劇をやってきた同志でありライバルであり、重要な人物だと思います。ギンジを例えば藤原竜也のような役者が演じて、しかもギンジを正面から描いていたならば、この映画はひときわ際立っただろうと思いました。