映画「インフェルノ」:ダンテの地獄篇の幻想

原作:ダン・ブラウン、脚本:デヴィッド・コープ、監督:ロン・ハワード

配役:トム・ハンクス(ロバート・ラングドン)、フェリシティ・ジョーンズ(シエナ・ブルックス)、オマール・シー(クリストフ・ブシャール)、シセ・バベット・クヌッセン(エリザベス・シンスキー)、イルファン・カーン(ハリー・シムズ)、ベン・フォスター(バートランド・ゾブリスト)

【あらすじ】

 「このままでは人口爆発によって将来人類は滅ぶ。致死率が高いウイルスを世界中に拡散させて今のうちに人類の数を減らそう」と考えた微生物学者がいました。その名はゾブリスト。ゾブリストは映画の冒頭で死んでしまいますが、ウイルスをある場所に隠しており、その場所をダンテの「神曲」の「地獄篇」をモチーフにして暗号化していました。その手掛かりを解明していくのが、トム・ハンクス演じるケンブリッジ大学の宗教象徴学者・ラングドン教授です。ラングドンは拉致されてイタリアの病院で目を覚まし、フェリシティ・ジョーンズ演じる女医シエナと共にイタリア軍やイタリア警察に追いかけられ、なぜかWHO、そして謎の組織からも追われます。この映画はスピード感にあふれたもので、逃げる、走る、高所、出血、逃げる、走る、地下、出血・・・みたいなノリで進んでいきます。そして、誰が味方かわからないような状況を経たのちに、ウイルス拡散を図る勢力とWHOとのウイルス争奪戦にもつれ込みます。

 

【感想】

 この映画の俳優は走る、走る。最後には泳ぎもする。とにかく俳優達の体力がすごいです。冒頭でベン・フォスターが走る。トム・ハンクスも走る。フェリシティ・ジョーンズも踵が高い靴を履いて良く走る。オマール・シーもトム・ハンクスとフェリシティ・ジョーンズを追って走る。最後にはトム・ハンクスもフェリシティ・ジョーンズもシセ・バベット・クヌッセンも水中の格闘で全身ずぶぬれです。一流の俳優とはとにかく体力勝負だなあと感嘆した次第です。

 

 さて、この映画の謎のテーマはダンテと「地獄篇」です。冒頭でラングドンがインフェルノの幻影を見るシーンは怖かったです。意識を回復したラングドンの視線を再現した映像は不安感を増幅させるものでした。この映画の映像はただものではありません。映画の中にルネサンスの雰囲気が濃厚に描かれていました。フィレンツェのヴェッキオ宮殿でロケされていて、そのシーンを見るだけでも価値があるでしょう。そして舞台はフィレンツェからヴェネツィア、そしてイスタンブールに飛びます。謎の解明にはダンテのデスマスクが重要な役を果たします。ダンテのデスマスクは目を開けていて不気味に思われました。インフェルノにまつわる謎解きが描かれますが、ストーリー展開にも意外なトリックがあって飽きることがありませんでした。

 

 俳優では、イルファン・カーンが特徴的な目つきで曲者感が強いキャラクターを演じていて印象的でした。オマール・シーは目が真っ赤に充血していたのが怖かったです。ベン・フォスターの明るい瞳は狂信的な科学者というよりは根っからの善人のように見え、それゆえに人類を救うという純粋な目的を持ちながら方法を誤った感じが強く出せたように思われました。

 

 過去の歴史で人類は、疫病や戦争、飢饉などで人口が大きく減ったことがありました。ですが、地球上で天敵がいない人類は近年ネズミ算的に増えました。世界の人口問題がこの映画の背景にあります。また、エボラ出血熱の流行があったのは2014年でしたが、感染症が今もなお人類を脅かしうることも背景です。地球上の人口を適切な規模に保つことは大切ですが、どのように調節していったらいいのか、正直言ってよくわかりません。先進国では人口減少傾向がみられますが、後進国ではそうではありません。世界中が先進国になれば人口が減少するのでしょうか。いずれにしても人口はだんだんに推移していくのがよく、一気に人口減というのは弊害が多いように思います。