映画「疾風ロンド」:スキーアクションは見もの

原作: 東野圭吾

監督: 吉田照幸

配役: 阿部寛(栗林)、大倉忠義(根津)、大島優子(千晶)、ムロツヨシ(折口)、柄本明(所長)

 

 この映画は犯人がスキー場に隠した炭疽菌を大学研究所職員が秘密裡に回収する話です。ストーリーや設定が支離滅裂ですが、それが許容できる人には面白い作品でしょう。危険な炭疽菌に対する取り扱いが杜撰で緊迫感がなく、中途半端な笑いを織り交ぜて物語はゆるく進行します。しかし、時折入るアクションシーンは迫力があるので寝ている暇がありません。一般的に、映画に対して全シーンにわたって質の高さを求める人もいれば、全体の中に一部でも優れた部分があれば良しとする人もいるでしょう。製作者のセンスと合うかも含めて、人によって評価が大きく分かれそうな作品です。

【タイトルについて】

 ロンドとは舞曲であり、ロンド形式とは間に別の旋律をはさみながら同じ旋律を何度も繰り返す音楽の形式です。物語の内容に繰り返しは特になかったと思うので、映画タイトルと物語の内容との関係が結局よく分からなかったのでした。ロンドではないですが、冒頭に流れたシューマンのピアノ曲「飛翔」は印象的でした。

 

【炭疽菌について】

 炭疽菌とは連鎖桿菌の一種です。炭疽菌は生育条件が悪い場合に芽胞を形成して、熱や化学物質に対して強い耐性を持ちます。芽胞を吸入すると人に肺炭疽を起こしますが、伝染病ではありません。多くの抗生剤が効きます。炭疽菌による土壌汚染は半永久的に続きます。炭疽菌は生物兵器として応用が考えられましたが、土壌汚染の問題やワクチンの効力が不十分な点で不向きです。なお、生物兵器は国際条約で禁止されています。2001年にアメリカで炭疽菌が郵送されるという生物テロが起こりました。以上の観点から、本作品が生物テロ用に炭疽菌を着目したのはありうる話ですが、ワクチンが無効という設定は生物テロを起こした側も危険にさらされるのでナンセンスでしょう。

 

【スキー場と滑降シーン】

 スキーで逃げる折口を千晶がスノーボードで追いかけるシーンは野沢温泉スキー場で撮影されました。このシーンはスピード感があり、素晴らしく良く撮れていて、スタントマンも撮影者もさすがだと思いました。

 

【カーアクション】

 軽トラを飛ばして高速バスを先回りするシーンがありました。マニュアルシフトでFRの軽トラは後輪の加重が軽いことあってドリフトしやすいので、うまい人が運転すれば結構アクションに向いていると思います。軽トラは非力なので映画のように上り坂でなく下り坂で撮るのに向くのでしょう。ただし、錆びてボロボロの軽トラを使ったのはいかにも製作費をケチったようでしょぼく感じられました。

 

【俳優について】

 阿部寛や大島優子のファンにとっては新たな魅力発見につながったのではないでしょうか。柄本明がこの映画で演じた所長のはじけっぷりと彼がシン・ゴジラで演じた内閣官房長官の落ち着きぶりとを比べると、その振幅の大きさが面白かったです。