「日本人の坐り方」を読んで座り方を考える

矢田部英正著:集英社新書

 

 私は最近、フローリングの床に座ってかぶりつきでテレビを見るのですが、どのように座ったらいいか悩んでいます。正坐では脚がしびれますし、胡坐(あぐら)では猫背になり首が疲れます。体育座りも猫背になり首が疲れます。横になって見ると首と目が疲れますし、そのうち寝てしまいます。

 椅子にかけて見たらいいというご意見もあるでしょう。私も普段は遠くから、椅子に座ってテレビを見ていますが、本気で見たいときはテレビににじり寄りたくなるではないですか。

 そんなときに以前読んだ、矢田部先生の「日本人の坐り方」を思い出しました。この本に床の座り方のヒントがあるのではないでしょうか。

 

【内容】

 本の内容をざっくり紹介します。著者は幕末の武士の写真を見て、家臣達が武家屋敷の前で「ヤンキー坐り」をしていたのに衝撃を受けます。それで、写真や絵で昔の日本人の坐り方を調べたところ、正坐が唯一の作法ではなかったことに気づきました。むしろ「正坐」の歴史は浅く、昔の日本人は多様な坐り方をしていたのでした。具体的には、胡坐、安坐、立膝、貴人坐などです。正坐は江戸幕府の武士の儀礼から広まったようで、幕末の女性もみな正坐をしています。それ以前は男女を問わず立膝をしたり、楽な座り方をしていたそうです。その理由として、室町時代の着物の身幅が江戸時代よりも広くて立膝をしても裾が開きにくかったことがあげられます。貴人坐というのは膝を大きく開いて脚は組まない座り方で、昔の偉い人の絵や像でみられます。立膝はひじ掛けになったり、書を書くときの机代わりになったりする便利な方法です。脇息を使う場合は反対側を立膝にするとよいそうです。蹲踞(そんきょ)とか結跏趺坐(けっかふざ)とか、その他の事例も紹介されています。最後の方に座り方の一覧表が出ています。

 

【感想と工夫】

 この本は大変参考になりました。しかしながら、本書は教養書であって実用書ではありません。どの坐り方がいいかは各自で考えなければなりません。

 

 まず考えたことは、正坐が優れていることです。正坐は背筋が伸びますし、腰への負担が少ない座り方です。正坐は平伏しやすいですし、書道をするのにも適しています。正坐から居合抜きをしやすいことも武士に好まれた理由ではないでしょうか。ただし、正坐の欠点は脚がしびれることです。

 脚を組む方法は背筋が丸くなって猫背になりやすいです。結跏趺坐は座禅で行いますし、ヨガの聖人の写真でも見られる座り方です。この方法は脚が細くて関節が柔らかい人向きです。私のような者にとっては、結跏趺坐や半跏趺坐に脚を組むのはプロレス技の4の字固めをかけられた時のような苦痛があります。

 ヤンキー坐りというか、単にしゃがむのは屋外で地べたに座りたくないときの方法であって、床の場合には当てはまりません。

 

 好ましい座り方の要件を考えてみました。まず、背筋が伸びていることが大切です。人間の重い頭を支えるには脊柱が直立している必要があります。次に身体が左右対称になるように坐ることです。左右対称でないとどこかの筋肉が凝ります。脚を組んでしまうと身体が左右対称ではなくなります。

 そのような要件を満たすには座布団を使うのが便利だとわかりました。結論として三つの座り方を推奨します。実行するには厚い座布団が最大四枚必要です。

 

①座布団正坐

 座布団を二枚敷いて正坐をするのですが、その際に足の裏とお尻の間に二つ折りにした別の座布団を挟みます。こうすることで膝が曲がる角度が小さくなり、脚への圧力が減って脚がしびれにくくなります。それと背筋が伸びやすくなります。敷いたり挟んだりする座布団は必ずしも二枚でなくてもかまいません。この方法で足が座布団から後方にはみ出るのは好ましくありません。座布団の前の方に座って膝頭が座布団から少しはみ出るくらいの方が安定します。

②貴人坐と投げ足を交互に

 座布団を一枚敷いて膝を思いきり開いて足の裏を合わせて貴人坐にして座ります。この時、お尻の下に二つ折りにした座布団を敷きます。そうすると背筋が伸びます。足の裏を合わせたことで外側のくるぶしが床に着きますが、そこに座布団が敷いてあるのがミソです。脚を組まないで曲げて前後に並べて安座にしてもいいのですが、そうすると身体の左右のバランスが微妙に崩れます。貴人坐だけだと脚が疲れるので、二つ折り座布団をお尻に敷いたまま脚を伸ばして投げ足にします。その際に両脚を前方に揃えてもいいのですが、大抵の人は脚を開いた方が安定するでしょう。このように貴人坐と投げ足を交互に繰り返して、脚を曲げたり伸ばしたりします。

③座布団割坐

 割坐というのは正坐から足首を左右に開いてお尻を床につける座り方であり、いわゆる「女の子座り」です。これを行うには股関節と脚関節の柔軟性が必要ですし、膝に負担がかかりやすいです。座布団を四枚使うことで割坐を楽な座り方に変えられます。

 まず、座布団を二枚横に並べます。次に中央の部分に二つ折りにした座布団を二枚重ね、その上にまたがります。すなわち、折って重ねた座布団の上に馬乗りになります。大きさ的には馬ではなくて大型犬にまたがる感じでしょうか。そして脚を割坐の要領で曲げて坐ります。こうすることで膝への体重負荷が減って脚がしびれにくくなりますし、背筋が伸びます。

 

【まとめ】

 「日本人の坐り方」を参考に、座布団を使って床に楽に座る三つの方法を考えて紹介しました。できれば、これらの三つの座り方を交互に行うのが望ましいです。なぜなら、脚は定期的に伸ばすべきであり、そうするには投げ足を組み入れる必要があるからです。なお、これらの方法は人目を一切考慮していません。冒頭で紹介したように、一人でテレビを見る状況を想定したものです。他人の目があるときは自己責任でお試しください。