映画「サバイバルファミリー」:笑って生き残りを考え

原作・監督:矢口史靖

出演:小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、他

【感想】

 突然、日本全体で電気が使えなくなり、東京に住む四人家族が生き残りをかけて鹿児島の実家を目指して自転車で行くという、笑いあり涙ありの娯楽映画です。この映画は電気がなくなったらどうなるかを考えさせます。そして電気がふんだんに使える日常のありがたさに気づかされます。それと、非常時に大切なのは何かということも。

 

 お父さんは行きあたりばったりながら、前向きなのは良いと思いました。お母さんはおっとりしているようで、へそくりを貯めていたり、買い物の交渉が巧みであったりして、しっかりしていました。大学生の息子と高校生の娘が環境の変化に戸惑いながらもたくましく成長していく姿も良いと思いました。

 

 まあ、こういう映画でリアリティについて突っ込むのは野暮なのでしょうが、大規模停電はいいとしても、電池とバッテリーの電気もなくなるのは変でした。これはおそらく、家族が車で移動しないようにさせるための設定だと思われます。自転車で暗いトンネルの中を通る時も自転車の発電機でライトをつければいいことです。最後の方で目覚まし時計の消耗した電池がいきなり回復するのもおかしいです。 

 

 自転車の速度を考えると、実際の移動日数を映画よりも短くすることは可能だと思います。私の知り合いでサイクリングをする人は一日に百キロ移動するそうです。ウルトラマラソンでも百キロを走るわけですし。ただし、荷物を積んでママチャリで走るので交通事情も考慮すると一日の移動距離はもっと短かくなるかもしれません。

 

 川沿いに延々と移動しても橋が見つからないので、家族がいかだで川越えをするシーンがありました。日本のように道路が多い国でそんなに橋がない場所があるでしょうか。

 お父さんが川で行方不明になった後に家族三人が線路を歩くシーンがあります。ところが、線路内に立ち入ると鉄道営業法違反になります。そして、列車を止めて遅延させると損害賠償を請求されるおそれがあるので要注意です。また、映画のように列車が都合よく止まることはないでしょう。

 お父さんが畑で発炎筒を焚いたのを列車から家族が発見して列車を止めさせるシーンがありました。水没した発炎筒って点火できるんでしたっけ? タイミングも含めて、どうしてそんなに都合良く話を作るのでしょうか。

 

【都会でのサバイバル】

 映画ではサバイバルの要件として、体温を保つこと、飲み水を確保すること、火を使うことを挙げていました。

 

 大都会の便利な生活も大停電に弱いのは映画の通りです。電子化されていた全てのものが停電で無力化されてしまいます。都会で物流が途切れるとスーパーやコンビニから一斉に商品が消えます。停電でクレジットカードが使えず、支払いは現金になりますが、その時ATMは使えない状態です。ですので、普段からまとまった額の現金を手持ちにしておく必要があるでしょう。大規模災害時には金に対して物の価値が上がり、生活必需品が品薄となって値上がりし、最終的には物物交換になります。

 

 災害時に自動車は大渋滞やガソリン不足で役に立たないかもしれません。災害時に自転車が役に立つことはこの映画の良い着眼点でした。そして、自分でパンク修理できる事も大切でした。ただ、自転車で遠距離を移動するのは危険だと感じました。東京から関東圏くらいの移動ならば自転車はありだと思いますが、さすがに鹿児島まで行くのは無謀でしょう。自転車では運べる荷物の量に限界があります。また、キャンプ装備がない場合に戸外で泊まることのリスクが考慮されていないように思いました。アウトドアでは、雨や寝具、蚊やあぶ・ぶよなどの虫さされを考慮する必要がありますし、治安も問題です。雨風をしのいで体温を保つことを考えると自宅に留まるのが有利です。自転車は遠出をして物資を調達するのに使うのが良いと思いました。その場合、道路地図は最新のものが必要です。

 

 自宅に留まる場合は、飲料水と食料とトイレが重要です。大人は一日3リットルの水分を必要とするといいます。局地的な災害の場合は外部から救援が来るまで自力でしのげばよいと思います。飲料水として2リットル入りのミネラルウォーターのペットボトルを必要な日数分だけ箱買いしてストックしておくのがいいと思います。水はあればあるだけいいので、停電になった直後に飲料水として空のペットボトルに水を汲んでおくのがいいと思います。停電後に断水になる場合があるからです。なお、断水になった場合には蛇口から空気が入らないように蛇口を締めておくことが大切です。

 

 断水になったら水洗トイレを使うことをあきらめるのが賢明だと思います。なぜなら、水洗トイレは使用後に大量の水を使うからです。簡単に川の水を汲んで来られる状況では水洗トイレを使えるでしょう。この場合、一気に水を流すのにバケツが必要です。高層階の住人にとっては水運びは重労働です。水洗トイレを使わない場合は、非常用トイレを備蓄しておいて使うのがいいと思います。いずれにしてもトイレットペーパーは十分な備蓄が必要です。

 

 食料は乾物や缶詰めなど保存が利くものをストックしておいて普段から古いものから消費しては新しいものを補充していくのがいいでしょう。炭水化物とタンパク質、砂糖と塩、それとビタミン類のサプリがあれば食料的にはなんとかなるのではないでしょうか。タンパク源としては魚の缶詰とか粉末スキムミルクが貯蔵が利くので好適でしょう。また、レトルト食品は加熱しなくても食べられます。水を消費して洗い物をしなくて済むように、皿にサランラップをかけて食事をして、後にサランラップを捨てるのがよいそうです。調理には映画に出てきたようにカセットコンロが役立つでしょう。

  

 その他、照明にはマッチ(ライター)と蝋燭があるといいでしょう。仏壇がある家ならそれらを多めに買い置きしていれば済む話です。情報を得るには電池式のラジオが必要です。LEDの懐中電灯は重宝するでしょう。

 

 非常時には日常時と意識をしっかり切り替えることが大切です。そのためには、「地にいて乱を忘れず」の精神で、普段から最悪の事態を想定して対策を練り準備しておくことが重要だと思います。