映画「3月のライオン 前編」:高校生プロ棋士の葛藤

原作:羽海野チカ

監督・脚本:大友啓史

配役:神木隆之介(桐山零)、有村架純(幸田香子)、倉科カナ(川本あかり)、清原果耶(川本ひなた)、二階堂晴信(染谷将太)、佐々木蔵之介(島田開)、加瀬亮(宗谷冬司)、伊藤英明(後藤正宗)、豊川悦司(幸田柾近)、奥野瑛太(山崎順慶)

 これは高校生の将棋棋士を描いた原作漫画・アニメを実写化した映画です。

タイトルは謎でしたが、3月はライオンのようにやってくる、(March comes in lile a lion.)という英国のことわざが由来らしいです。

 

 さて、前編のストーリーです。

 作者が創造した主人公の桐山零は、小学生の時に家族を交通事故で亡くしたという不幸な生い立ちを持ち、父の知り合いの将棋棋士・幸田柾近に引き取られて、中学生でプロ棋士になりました。その過程でプロ棋士を目指していた幸田の娘・香子と息子・歩を圧倒してしまい、家を出て一人暮らしをすることになりました。零は先輩に飲めない酒を飲まされてつぶれているところを川本あかりに助られ、それ以降川本三姉妹の一家に食事をごちそうになったり、ひどい風邪のときに介抱してもらったりとお世話になるようになりました。同輩棋士の二階堂はライバルでありながら、何かと零を引き立ててくれました。妻帯者でありながら義姉の香子と付き合う後藤をとがめた零は後藤から殴られました。そして、後藤に将棋で勝ったら後藤と別れるように香子に言いました。零はA級八段の島田開に負かされてから、島田の研究会に入って研鑽をすることになりました。島田は後藤を接戦の末に破りました。島田は名人の宗谷に挑戦して逆転の一手を見逃して破れました。一方、零は新人王戦で山崎順慶に勝って優勝しました。

 

 今年は将棋の映画が続いており、将棋人気が高まっているのでしょうか。

 この映画は将棋の盤面がわりとよく映っているので、将棋ファンにも向くかもしれません。

 映画は棋士たちの人間ドラマが主であり、シリアスな内容です。ニャーが写ったのは一瞬でした。主演の神木隆之介は原作の持ち味を良く出していて見事な演技だと思います。特殊メイクの二階堂役には違和感を覚えるのですが、他には適当な候補が見当たりません。香子役の有村架純は予想していたよりも良く役にはまっていたように思います。新人王戦の決勝戦で零が対戦した山崎順慶役は頭髪も眉毛も剃っていた大男で、誰かと思ったら奥野瑛太でした。苦戦しているときの頭の皮膚に血管を浮き出させて考える表情はものすごい迫力でした。奥野瑛太は存在感あふれる俳優へと順調に育っていて頼もしいかぎりです。

 

 それにしても将棋シーン、タイトル戦は実際は密室の中でやるのではないでしょうか。また、ポーカーフェースだったのは宗谷名人だけで、他の人は戦況が表情に出すぎだと思います。この作品では、棋士は勝負士の面が強く描かれていて、ひと昔前の将棋指しのように思えました。冷静な競技者としての棋士、もしくは新手を創造するとか、美しい棋譜を残すとかを指向する棋士が描かれていなかったのはちょっぴり残念です。

 棋士が将棋を指しているのを実際に見る機会は、NHK杯のテレビ放映とか公開対局しかありません。そこで見る棋士は、静かに普通に将棋を指していて、脂汗を流している感じではありません。この映画を見てからは、将棋の指し手ではなく、将棋を指している人をもっと注目して見ようと思うようになりました。

 

 ともかく、前編は後編を見たくなるような内容であり、なかなかの出来だったと思います。