NHKのドラマ「アシガール」が面白くて、毎週楽しみに見ています。
戦国時代の軍事に興味があり、いろいろ調べたり考えたりしてみました。
別にドラマや原作に異議を唱えるつもりは全くなくて、以下は単にドラマをネタにして遊んでいるだけなのです。
【足軽の装備について】
陣笠は簡易兜であり、薄い鉄板を曲げて作ることが多かったようです。
すると陣笠は結構重いものだったということになります。
背中に陣笠を背負うのでは走りにくいと思います。
戦国時代に陣笠を鍋代りにしたという情報もあります。
放映されたように陣笠を食べ物を盛る皿の代用にするのはありだと思いますが、陣笠を加熱調理用に使うのはどうでしょうか。
せっかく陣笠に塗った漆や紋章が焼けて剥げてしまうのではないでしょうか。
足軽の槍はすごく長かったはずです。
足軽の槍は三間(5.4m)はあったといいますから、身長三人分に相当します。
攻撃の際には棒術の要領で敵をぶっ叩くのが効果的でした。
槍は左手で柄を持ち、右手で繰り出して突きますが、足軽の持つ長い槍では素早く繰り出す動作が大変なのでしょう。
【合戦シーンで思うこと】
足軽は飛び道具を使いました。
投石が効果があったといいます。
その場合、投石道具を使ったらしいです。
足軽は他に弓矢と鉄砲を使いました。
飛び道具に対しては同じ飛び道具で応戦するのがセオリーです。
高山軍が鉄砲を持っているのに、羽木軍で持っていないようで不利です。
一方的に高山軍から鉄砲を打ちかけられる状況では羽木軍に勝ち目はありません。
ドラマでは盾で矢を防いだり、竹束で鉄砲玉よけして飛び道具に対して防御していました。
この点はNHKはよく描写していたと思います。
遠矢は上から落ちて来る点で横から飛んで来る鉄砲より防御しにくいことがあります。
【乱戦では】
実際には木村政秀のように鎧の上から刀で人は切れないでしょう。
刀は間合いが近くて実戦では使いにくい印象があります。
なので実戦では長い槍が主体となるでしょう。
足軽は軽装備なので肌の露出が多いです。
足軽は武芸が達者ではない農民が主体です。
したがって一対一の戦闘には不向きです。
足軽は集団で槍ぶすまを作って戦ったのでしょう。
【刀の持ち方について】
左手の小指を刀の柄にかけて持ち、両手で雑巾を絞るようにして刀を振ります。すると刀を振る軌道が安定しますし、寸止めもできます。天野の爺が刀を振って唯之助をびっくりさせたシーンを見てそう思いました。
【陣形について】
地図では西に小垣城があり、東に鹿之原があって、北の高山軍と南の羽木軍が対峙しています。西に大垣城だと東は関ケ原になってしまいます。軍勢の南北と東西を入れ替えると、あたかもミニ関ケ原という感じです。
ドラマでは千人の兵力の羽木軍が三百人の別動隊を背後の立木山に派遣したという設定ですが、すると本隊が七百人に減り弱くなります。
何よりも総大将の命令なしで別動隊が派遣されることはありえないでしょう。
以下、将棋の駒を動かすようにして脳内シミュレーションをして遊んでみました。
●印は大将がいる部隊とします。
高山(こうやま)軍が三倍もの兵力を持っていながら、山を背にして鶴翼の陣をとったのは少数の敵を包囲殲滅するための必勝態勢といえます。(図1)

ドラマではこれに対して羽木軍は先鋒を多くした縦陣である鋒矢(ほうし)の陣で対戦しました。
敵軍の中央突破をはかる構えです。
鋒矢(ほうし)の陣は味方兵力が多ければ成立するかと思いますが、寡兵では鶴翼の両翼に包囲されてしまいます。(図2)

すると、第一回放送の冒頭のシーンのように先鋒が三方から鉄砲で打ちかけられて前進できず、「もはやこれまでか」の局面となるしょう。 したがって、兵力が千人で、高山軍の三分の一の羽木軍は中央突破するのは無理でしょう。
鶴翼の陣を機能させるには、右翼と左翼の連携をうまく行う必要があり、高度な用兵が要求されます。
私なら、この局面では鶴翼の中央を攻めることはしません。
雁行陣で寄せて行き、鶴翼の右翼の端を攻めることを考えます。(図3 )

これは、鶴翼の中央と左翼を遊兵にしてしまう意図です。
霧が出ていて視界がきかないうちに羽木軍から先攻することで勝機があると思われます。
鶴翼の両翼の連携ができない状況であれば、相手を崩せる可能性があります。(図4)

ただし、高山軍の中央と左翼が救援に来ないうちに相手を崩す必要があります。
相手が態勢を立て直して、相手の左翼の隊に回り込まれて、退路を断たれ包囲されると羽木軍が窮地に陥いります。(図5)

左翼からの高山軍に包囲される前に小垣城から援軍が来るならば、羽木軍が勝てると思います。(図6)

城からの援軍が無いのであれば、図4で敵軍の右翼を崩してから、相手が態勢を整えて押し返して来る前に小垣城に戻るべきでしょう。(図7)

やはり、後詰めが無い状況では羽木軍は決戦を避けるのが本筋でしょう。
ドラマでは「まぼ兵君」を使うことによって羽木軍が戦わずして高山軍を引かせることができました。
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