映画「ミックス」:卓球シーンをリアルに撮るには

監督:石川淳一、脚本:古沢良太

 「ミックス」は卓球を題材としたオリジナル映画です。これはヒット作の方程式を解いてみたような映画です。ヒロインに「逃げ恥」が大ヒットした新垣結衣を起用し、瑛太とダブル主演のラブコメに仕立てています。主役級の豪華俳優達を惜しげもなく脇役に使っています。卓球がメインの映画は珍しく、新鮮味を出しながら近頃の卓球ブームにしっかりと便乗しています。

 

 ざっくりしたストーリーです。

 新垣結衣が演じる富田多満子は卓球の元天才少女です。タマコは鬼のような母のコーチに反発して母の死後15年間卓球から離れていました。タマコは職場で卓球界のスター江島(瀬戸康史)と恋人になりますが、卓球選手の後輩・愛莉(永野芽郁)に彼氏を横取りされてしまいます、タマコは妻娘と別れた元ボクサー(瑛太)とミックスダブルスを組んで元彼のペアに卓球でリベンジをはかります。また、母(真木よう子)が作った会員制卓球クラブの再建に挑戦します・・・。

 

 前半はテンポが良くて笑えるシーンが多くて面白かったのですが、後半はグダグダになった印象がありました。そしてけっこうご都合主義な結末だったように思います。それでも前半の貯金と因縁の決勝戦シーンの盛り上がりで逃げ切る展開でした。ガッキーの魅力は絶大であり、結局この映画は普通に楽しかったのでした。

 

【俳優が卓球がうまい?】

 私は俳優達が卓球がうまいのに驚きました。卓球映画ですから当たり前かもしれないのですが、それにしてもみな卓球がうまいです。新垣結衣と瑛太のペアが、高校生役や大学生役で出た日本のトップ選手達とラリーをするのです。元彼役の瀬戸康史も敵役の永野芽郁もうまい。広末涼子はカットマンで粘り強くつなぎます。県警チームの選手役の吉田鋼太郎でさえうまい。蒼井優に至っては、実は中国卓球のナショナルチームを目指した過去を持つ中華料理店の店員の役で、これまたすごくうまい。いつしか私の興味は映画のストーリーよりも、俳優達の卓球のうまさの謎に向かったのでした。

 

 卓球シーンをうまく撮るには、まず、卓球の部活経験者を集めるのが正攻法でしょう。卓球選手はマッチョである必要はなく、映画の中で体形的に卓球部っぽいのは瀬戸康史と広末涼子です。ですが、広末は陸上部だったはず。瑛太は球技ならバスケやサッカーのイメージがありますが、モデル出身? 新垣結衣も永野芽郁も蒼井優もモデル?

 

 私の想像は膨らんでいきます。俳優は肉体商売なのでみな運動神経が発達しているのかもしれません。収録に際して実際に卓球のプロの指導がありました。彼等が本気を出して練習すればものすごい集中力でみるみる上達するのかもしれません。中国人が皆卓球がうまいように、芸能人は皆卓球がうまいのかもしれません。私の脳裏には、日本中の芸能プロダクションに卓球台が置かれ、空き時間にタレント達が喜々として卓球をしている光景が浮かびました。

 

 そうこうしているうちに私はあることに気がつきました。

 卓球の音が変なのです。

 ラケットの打球音や球が卓球台に跳ね返る音がガツッと重いのです。ラケットで打つ時はラバーで回転をかけますし、球は卓球台に斜めに当たりますから、もっと軽い音がするはずなのです。

 

 そう、卓球シーンの球の音は効果音でした。

 卓球シーンは俳優がエア卓球をして、球をCGで作ったものだったのですね。

 

 結論ですが、私は卓球シーンのCG化はやむを得ないと思います。その場合、卓球シーンをリアルに撮るコツは音の収録だと思いました。実戦の球の音を録音してからタイミングを調節してプレーに合わせればより自然であったのではないでしょうか。