映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」:魔都鎌倉と黄泉の国の世界観

 この映画は古都鎌倉を舞台にしたファンタジー作品です。原作は西岸良平の漫画であり、山崎貴監督が脚本とVFXも担当して製作されました。

 戦後の昭和で壮年の物書きの夫が若い妻とレトロな家で新婚生活を送っていました。ある時、妻が幽体離脱して、その霊魂が黄泉の国に行ってしまいました。夫は黄泉の国に行き、妻を連れ戻そうとするのですが、ラスボスのような邪鬼が行く手を阻みます・・・。

 堺雅人が夫の一色正和を演じ、高畑充希が妻・一色亜紀子を演じていました。堺雅人は最初は作家に見えたのでしたが、話が進んでから見直してみるとやっぱりいつもの堺雅人でした。高畑充希は堺雅人とイチャイチャしていて、ウザかわいい感じでした。

 【リアル鎌倉】

 鎌倉市は三浦半島の西側の付け根に位置している、滑川(なめりがわ)の三角州にできた町です。由比ガ浜から鶴岡八幡宮まで真っすぐに結ぶ若宮大路が南南西から北北東に走り、その道が鎌倉市の中心軸になっています。鎌倉は三方を山に囲まれ、南西に海が開けた地形です。気候は温暖であり、12月に紅葉が見られるほどです。鎌倉は源頼朝が幕府を開いた土地です。江戸時代には門前町としてにぎわい、西に位置する江の島とともに観光地化したそうです。

 私は鎌倉に行くのが好きで、なかでも銭洗い弁天から高徳院の大仏を経て長谷寺まで歩くコースが気に入っています。

 

【魔都・鎌倉の世界観】

 日本史上で、刀と弓矢と馬を与えた条件では鎌倉武士が最強だったと思います。そうした鎌倉武士たちの霊が今もさまよっているというイメージを私は鎌倉に対して持っていましたが、それは偏見でした。

 

 この作品で描かれる鎌倉は死者や妖怪が生者と共存する世界です。この作品に出てくる死者は現代人であり、死んで間もない人が死神と契約して黄泉に行くまでの猶予期間をもらって現世に留まるのです。映画では配偶者に先立って亡くなった人が配偶者と一緒に暮らし、配偶者が亡くなると一緒に黄泉の国に旅立っていくのでした。

 

 鎌倉は山と海の自然が豊かな場所であり、虫や蜘蛛や蛇が多いという印象があります。映画の最初の方で、夫婦の前を小さくて可愛い河童が横切るシーンを見て私はずっこけました。本来河童は水死者の霊なのですが、この映画の世界観の中ではそんな事はもう、どうでも良くなりました。鎌倉には妖怪の市場があって人間も普通に買い物をしています。鎌倉ならそれもありかもと思えるのでした。

 

【黄泉の国の世界観】

 古代日本では人は死んだら地下にある黄泉の国に行くと考えられていました。黄泉は死者が住む穢れた世界ですが、地獄のような死者が刑罰を受ける世界という意味はありませんでした。古事記に、妻神のイザナミが亡くなり、悲しんだ夫神のイザナギが亡き妻を追って黄泉の国に行く話があります。その話が、この映画作品のモチーフになっているのでしょう。

 

 鎌倉で亡くなった人は古い江ノ電に乗り、現世駅から黄泉駅に向かいます。黄泉の国では天を突くような高い岩がそびえ、岩の上に和式長屋が連なって高層住宅を形成しています。黄泉の国では人によって世界の見え方が異なるのだそうで、一色正和には戦前のような古い風景に見えました。

 

 この国で正和は亜紀子を探し出し、一緒に現世に帰ろうとしたその時に天燈鬼が現れます。天燈鬼は亜紀子が転生する前から亜紀子を妻にしようと狙っていたのでした。天燈鬼は興福寺の仏像が有名ですが、この映画に出てきた天燈鬼はウーパールーパーの化け物のような姿でした。

 

 面白いことに、黄泉の国では想像力で物を創り出せるのです。正和は作家の想像力を生かして、竹刀を創り出して天燈鬼配下の魔物と戦い、江ノ電を創り出して黄泉の国脱出を試み、追って来る天燈鬼を門を創り出してブロックしました。そこも突破されて二人は危機一髪となりますが・・・あとは見てのお楽しみです。