唐の都・長安のセットを6年かけて作った空海の映画がとうとう公開です。チェン・カイコ―監督が夢枕獏の小説と邂逅してできた、この映画は見て後悔させません。
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」というのが原作の小説です。空海が遣唐使船に乗って唐に留学した時の話という設定です。原作では、空海が同じ船で入唐した橘逸勢と一緒に奇怪な事件を解いていくというストーリーでした。それが、映画では橘逸勢は詩人・白楽天と入れ替わっています。
チェン・カイコ―監督の「始皇帝暗殺」は見たことがありました。チェン・カイコ―監督は古代中国の歴史を描きたい人なのではないでしょうか。夢枕獏は幻想的でほのかな怪談を書きたいように思われます。そんな彼等の共通点が空海であったように思います。この映画で出てくる空海は、本当に一沙門であって、加持祈祷をするわけでもなく超能力を発揮するわけでもありません。空海は怪奇現象に直面してもただ落ち着いているだけで、かといってすべてを読み切っているわけでもないという、どちらかというと無能なキャラとして描かれていました。
この映画の中で描かれる長安の栄華は見応えがあります。楊貴妃、玄宗皇帝、白楽天などは中国人俳優ならではのキャスティングです。千人クラスのエキストラの人海戦術が素晴らしいです。阿部寛は阿倍仲麻呂の役をやっていて「濃い感じ」をよく出していました。空海を演じたのは染谷将太でしたが、剃り上げた頭の形が良くて絵で見た空海っぽかったです。
黒猫が化け猫で、怪事件を起こし、それが半世紀も前の楊貴妃の死の謎と関連しているという話です。一種の怨霊談とも言えますが、それが楊貴妃の恨みであったように思えないところが動機が曖昧なところです。映画の中に幻術が出てきますが、この映画自体が大掛かりな幻術に思えました。
●空海の謎
空海は真言密教を唐から日本に伝えたすごい人です。
最澄が日本仏教の母であるならば、空海は密教の父でしょうか。
密教の本質とはなんでしょうか。
人間が仏になる方法論でしょうか。
色々な仏様に特有な「印」を手で結び、仏様の真言を口で唱え、仏様の姿を意識すると、仏様と一体になるんでしたね。
では、仏様になって何をする?
加持祈祷をする、上手な字を書く、著作する、寺を建てる、弟子を教育する、福祉事業をする・・・。
空海は大きくて全体像がつかみにくいです。
「空海あるある」です。
言い伝えに出てくる旅の坊さんは皆、空海。
昔に旅先で奇跡を起こした僧はみんな空海になっているようです。
空海は怪僧なのでしょうか。
怪僧といえばラスプーチン。
これは違うような気がします。
空海が入定した奥の院に今も食事を届けていますが、完食してたらどうしよう。
聖地・高野山はお墓でいっぱい。霊の貯蔵施設なのでは?
空海は今現在、遍照金剛として肉体がない存在でいるのでしょうか。それとも、人間に生まれ変わっているのでしょうか?
等々、色々な事が気になります。
真実の空海の姿は謎に包まれています。
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