映画「プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜」:自分が主役になれる場所

 いくえみ綾の漫画が原作の実写映画です。プリンシパルとはバレエの階級で主役のことだそうです。恋をすれぱ誰もが主役になれる、というのがテーマのようです。札幌を舞台に、高校生の繊細な感情が描かれたラブストーリーです。監督は篠原哲雄。この物語を黒島結奈、小瀧望、高杉真宙、川栄李奈のキャストでここまで撮ってくださればもうこれ以上望むことはありません。ロケ地の札幌と支笏湖の風景がとても綺麗です。

【ストーリー】

シマ(糸真:黒島結奈)は東京で友達にハブられて居場所がなくなり、父の住んでいる札幌に引っ越してきました。

そこで、初めて会ったゲン(弦:小瀧望)に「そこはワオの席だ。お前の席じゃねえから」と言われました。

札幌でも自分の居場所がないのかという不安を感じさせるスタートでした。

シマは犬のスミレを自宅に連れてきたワオ(和央:高杉真宙)と知り合います。

そしてワオと仲良しのゲンと交流を持つようになります。

転校早々にシマの友達になったハルカ(晴歌:川栄李奈)はゲンが好きでした。

ハルカはゲンやワオと交流しているシマが気にいりません。

ハルカにカラオケに行こうと誘われて嬉しかったのもつかのま、シマはハルカと友人達に約束をすっぽかされてしまい、ここでもハブられるのかと悲しみます。

それを慰めてくれたのが、ワオでした。

シマはワオに対して好感を持ったのですが、ワオは別の人が好きでした。

ワオはゲンの10才年上の姉のユミ(弓:谷村美月:高校の音楽の先生)が好きだったのです。

人間関係を整理すると、ハルカはゲンが好き、ゲンはワオが好き、ワオはユミが好き、ユミもワオが好きというものです。

その人間関係を知ってシマは自分が関わる隙がないことを知りました。

ひょんなことからシマはゲンと一緒に神社(弥彦神社だった)に初もうでに行くことになり、その後札幌の町を見下ろす高台(旭山記念公園か)に行きました。そこでシマはバレエを踊り、「自分が主役になれる場所をずっと探しているんだ」と言いました。

 

シマの父と離婚して4人目の夫と再婚した母が突然札幌にやってきて(札幌ビール園で)シマと会いました。母は「恋すると新しい自分になれるんだよ」とシマに言いました。

ワオは母子家庭だったのですが、なんとシマの父とワオの母が結婚し、シマとワオが義理のきょうだいになってしまいました。

 

ハルカはゲンに告白して付き合うことにし、ハルカの中学の同級生・金沢(市川知宏)をシマに紹介しました。シマは金沢と円山動物園でデートします。

その後、ハルカ、ゲン、ユミ、ワオ、シマ、金沢で支笏湖畔にキャンプに行きました。

シマは湖と山(恵庭岳)の風景を写真に撮ったのですが、何を撮ったか金沢に聞かれましたが、口ごもって答えませんでした。ワオが自分の好きな人に綺麗なものを真っ先に教えたくなると言った言葉がシマの頭をよぎったのでしょう。

そして、湖畔でハルカとゲンがキスしているのを遠目で見ると、シマは金沢を置いて走り去ってしまいます。

山道でシマは足をくじいて動けなくなってしまいます。

暗くなってからゲンが探しに来てシマを発見し、シマを背負ってキャンプ地に戻りました。

 

札幌に帰ってからシマは金沢に謝って別れました。

一方、ゲンはハルカに「お前とは付き合う前の方がつき合いやすい」と言って謝まりました。

ハルカは「友達ってことだね」と寂しそうに言いました。

 

シマは「ゲンが好き」とハルカに告白し、ハルカの呼び出しでシマとゲンが(北海道庁横で)会うことになりました。

そこでシマはゲンに告白したのですが、ゲンが誤解したためにシマは走り去りました。

 

シマは東京の大学を受験し、東京に引っ越すことになりました。

ゲンは大学受験で不合格でした。

シマが引っ越す前日にシマとゲンは高台(旭山記念公園か)で会いました。

ゲンが「俺はお前がいないとつまんないみたいだ」といい、シマは「私も」と答えました。

二人はキスをして、シマは「今、私って最高に主役みたい」と言いました。

ゲンは「ずっと前から主役だ」と答えました。

シマが越してきてからゲンの態度にずいぶん変化がありました。

シマはこの街に来て良かったと言っていました。

 

【札幌の力】

 本州の人にとって札幌という町は人生を変えるポテンシャルを持っています。吉方位で北に来れば愛情に恵まれ、吉方位で北東に来れば人生が好転するでしょう。

 

【札幌の演出】

 冒頭でシマはお父さんの運転する車に乗って札幌に向かうのですが、札幌の東の郊外から市内に向かっていました。真っすぐな道に一台だけ走っていて、はるかに札幌の街並みと背後の山々が見える印象的な風景でした。しかし、シマが新千歳空港に着いて真っすぐに札幌に向かうならば、その道は通らず、国道36号か道央道経由になります。当然、他にも沢山の車が走っています。

 シマとお父さんの住む家は札幌の中心部ということになっていましたが、西側の山の麓でした。お父さんの話では狐も鹿も出ないということでしたが、キタキツネがウロウロしていてもおかしくない場所のように思います。

 札幌市の西側の高地からの町並みの眺めと夜景は映画のように綺麗なものです。冬の積雪と初夏の新緑とが強烈な対比をなしていました。

 道庁近くでロケがありました。札幌は豊平川の扇状地にできた町です。湧水が豊富で昔ながらの風水が良い札幌は、道庁から植物園、知事公館にかけてのあたりだと思うのですが、その点映画は良い所に目をつけたと思います。札幌の高校生がそこを待ち合わせ場所に選ぶかはいささか疑問ではあるのですが。

 

【ユミが弾いた音楽】

 ユミが作品中でピアノで弾いた音楽は、モーツァルトのフィガロの結婚から「恋とはどんなものかしら」とヘンデルの「調子の良い鍛冶屋」でした。「恋とはどんなものかしら」は映画の内容と良く合っていたと思います。「調子の良い鍛冶屋」は私が好きな曲です。でも、ピアニストというものは演奏会では神妙にピアノを弾くものであり、映画のように聴衆に対して愛想を振りまきながら弾くというのは違和感があったのでした。

 

【俳優の感想】

 黒島結菜は時をかける少女です。三日前から戦国時代までタイムスリップする女子高生を演じてきました。本作のように時をかけないのも良いものです。

 小瀧望は原作のイメージ通りに染めた長髪で制服のネクタイを緩く締めていました。これが許されるなら、その高校はそうとう校則が緩いでしょう。ぶっきらぼうでやや鈍感さを感じさせる弦の役をうまく演じていたように思います。作品中で「弦って黙っていればいけてるのに」と言われていたのですが、実際に黙っているときの目の表情が魅力的で良かったと思います。

 高杉真宙はドラマ「セトウツミ」の内海役のクールな高校生とまた違った感じの演技で良かったと思います。

 川栄李奈の演技は見事でした。川栄李奈はアシガールでもプリンシパルでも黒島結菜に彼氏をゆずる役で、なんだか気の毒でした。実生活ではプリンシパルになってほしいと思います。

 総じて、四人の俳優の個性が際立つ映画でした。